【弁護士が解説】相続人が認知症の場合はどうするべきか
人が死亡すると相続が発生します。
このとき、相続人の中に認知症の者がいた場合には、相続手続きを進行させるためにどうすればよいのでしょうか。
本稿で詳しく解説していきます。
相続人が認知症の場合の問題点
相続人が認知症の場合はどうするべきかについて考える前提として、相続人が認知症の場合はどのような問題が発生するのか見ておきましょう。
一番の問題点は、遺産分割協議ができなくなってしまうことです。
相続が起こると、遺言がある場合には遺言に従って相続が行われます。
もっとも遺言がない場合には法定相続分に従った相続が行われることになり、これを避けて相続人の意思に従った相続をしたい場合には、遺産分割協議を行う必要があります。
これを行うことではじめて、預金や不動産など財産の処分をすることができます。
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。
しかし、このとき相続人の中に認知症等によって判断能力が低下した者がいる場合には、その者は遺産分割協議への参加および意思表示を行うことができないとされています。
そのため、認知症の相続人がいる場合には、遺産分割協議ができないということになってしまいます。
また、遺産分割協議に他の相続人が代理で参加する、署名を代筆する等しても、これらの行為は無効になってしまいます。
加えて、認知症の者は相続放棄を行うこともできません。
相続人が認知症の場合にすべきこと
では、遺産分割協議を行いたいが相続人が認知症の場合はどうするべきなのでしょうか。
このような場合には、成年後見制度を活用することになります。
成年後見制度とは、認知症等によって判断能力が低下した者の代わりに、後見人と呼ばれる者を選任して財産管理や重要な法律行為を任せる制度のことを指します。
この制度を活用することで、後見人が本人の代理人となって、遺産分割協議に参加することができるようになります。
加えて、相続放棄も後見人による手続きで可能となります。
もっとも、成年後見制度も万能ではなく、いくつかの問題点があります。
まず、法定後見の場合、つまり判断能力が低下した後に家庭裁判所が選任した後見人の場合には、親族ではなく専門家が後見人に選ばれる可能性が高いということが挙げられます。
家庭裁判所は近年、親族よりも弁護士等の専門家を後見人に選ぶことが多くなっており、現在では親族以外が後見人に選ばれた割合は約81%となっています。
そのため、財産管理及び遺産分割協議への参加は専門家が行うことになり、他の相続人にとっては必ずしも良い結果にならない場合があります。
次に、後見人に報酬を支払わなければならないということが挙げられます。
この報酬は月に2万円~6万円にまでなることがあり、中断をすることもできないため、被後見人の死亡まで高額の支払いが続くことになります。
加えて、後見人は被後見人の利益になるように活動する必要があるため、遺産分割協議において被後見人の取り分が多く設定されてしまい、柔軟な決定が難しくなってしまう場合があります。
相続人が認知症の場合に備えた生前対策
相続人が認知症の場合であっても、被相続人の側で死亡前に生前対策を行っておけば、トラブルを回避できる場合があります。
ここでは、そのような生前対策について紹介します。
- 遺言書の作成
まずは遺言書の作成が挙げられます。
遺言書に希望する相続の内容を記しておくことで、遺産分割協議なしで預貯金や不動産などの財産に関する相続手続きを進めることが可能です。
- 家族信託を行う
被相続人と相続人との間で家族信託を行い、承継先をあらかじめ決めておく方法でも、遺産分割協議なしで事前の契約の内容を反映した形での相続の実現が可能です。
- 生前贈与を行う
財産の生前贈与を行うことも考えられますが、贈与税など税金面での注意が必要になります。
相続問題・相続放棄については弁護士法人ユア・エースまでご相談ください
このように、相続人が認知症になってしまった場合には、成年後見制度を活用することになります。
もっとも、成年後見制度にも様々な注意点が存在するため、できれば被相続人が生きているうちに生前対策を行っておくことをおすすめします。
相続人の中に認知症の者がいる場合など、相続問題・相続放棄についてお悩みの場合には、法律の専門家である弁護士への相談をおすすめします。
弁護士法人ユア・エースでは、皆様からのご相談を承っております。
相続・遺言・遺産分割協議についてお悩みの方は弁護士法人ユア・エースまでお気軽にご相談ください。
提供する基礎知識
-
孫が代襲相続人になる...
孫が代襲相続人とはどのようなことでしょうか。この記事では代襲相続人になるには、どんなケースがあるか説[...]
-
相続放棄の期限はいつ...
相続放棄は、被相続人に債務などのマイナスの財産があった場合に支払い義務を免れることができるなど、一定[...]
-
【弁護士が解説】相続...
遺留分が兄弟に認められないのはなぜでしょうか。この記事ではその理由について説明します。また、介護など[...]
-
【遺留分の基礎知識】...
遺留分とは、一定の範囲の相続人に最低限保証された相続割合のことを指します。遺言の内容が遺留分を侵害し[...]
-
【弁護士が解説】相続...
人が死亡すると相続が発生します。このとき、相続人の中に認知症の者がいた場合には、相続手続きを進行させ[...]
-
相続関係説明図とは?...
相続手続きにおいては、相続関係説明図と呼ばれる図が必要となってきます。この図にはどのような目的があり[...]
よく検索されるキーワード
資格者紹介
弁護士正木 絢生
(まさき けんしょう)
一人ひとりに寄り添ったリーガルサービスをご提供します。
私は、東京都内を中心に医療過誤、離婚問題、労働問題、相続などの幅広い法律問題に対応しています。
お困りの際はおひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。
- 資格者所属団体
-
- 第二東京弁護士会
- 経歴
-
- 都内法律事務所勤務(~2018年9月)
- 当事務所設立(2018年9月)
- 株式会社TSUNAGU設立、取締役就任(2019年)
- 当事務所本店を中央区日本橋に移転(2020年9月)
- 当事務所福岡オフィスを開設(2021年7月)
- 当事務所大阪オフィスを開設(2023年9月)
- 当事務所名古屋オフィスを開設(2023年9月)
事務所概要
事務所名 | 弁護士法人ユア・エース |
---|---|
代表者 | 正木 絢生(まさき けんしょう) |
法人所属団体 | 第二東京弁護士会 |
所在地 |
弁護士法人ユア・エース〒103-0012 博多オフィス
〒812-0011 大阪オフィス
〒530-0001 名古屋オフィス
〒460-0008 |
TEL/FAX | TEL:03-6686-1742/FAX:03-6734-7186 |
営業時間 | 9:00~18:00(18:00以降は事前予約があれば対応可能) |
定休日 | 土・日・祝日(休日は事前予約があれば対応可能) |